反空爆の思想

反空爆の思想 (NHKブックス)

反空爆の思想 (NHKブックス)

現代においては空爆は最も主要な攻撃手段として使われています。
空調の効いた快適な航空機から、一家団欒を恐怖と流血と死に陥れる空爆という方法の特性を、歴史的な流れから書いています。
驚いたのは、日本が台湾を植民地にしていたころの話。
理蕃政策なる方針の下、現地の人々を支配するために、わざわざ人を集めて爆弾の威力を見せ付けていたそうです。
力を振りかざしても人々の心を支配できないことは明らかで、やがて霧社事件という蜂起を引き起こしますが。
精密誘導爆弾なる物も、結局何十メートルも誤差があるらしく、きれいな戦争などありえないということがわかります。
誤爆も「誤」ではなく、「計算された」ものなのです。

海兵隊には、人間の正常な感覚を麻痺させる訓練を施すことが必要だそうです。
正常な感覚をもってしては、人は人を殺せないのです。
しかし、空爆はボタン一つです。あたかも自宅の照明をつけるように、パソコンのエンターキーを押すかのように、それは行われます。ただ、爆弾が落ちたその場所で何が起こるのか、パイロットたちが直接感じ取ることはありません。
爆弾を落としている人は一度、近くに突然爆弾が落ちてくるという体験を、してみたらどうでしょうか。